奥さんや家族へ給与は、経費にならない?(青色事業専従者給与、事業専従者控除について)

はじめに

 事業主の方と同一生計内の奥さんや家族が事業に携わっている場合、その仕事の対価として奥さんや家族に給料を払うことがあると思います。しかし、その給与につき、個人事業主の方から「必要な経費にいれらないと聞いたのが、ほんと?」というご質問を頂くことがあります。
 その質問の答えは、原則的な取扱いは必要な経費となりません。ただ、一定の要件を満たすことにより、必要な経費となります。ここでは、同一生計内の奥さんや家族への給与について纏めておりますので、ご参考にされてください。

支払った給与の原則的取扱い

原則=支払った給与は必要な経費にならない

 事業主の方と生計を一にする配偶者(奥さん)や親族(子ども)の方が、事業のお手伝いをしている場合、事業主の方から奥さんや子どもにお給料を支払う場合があると思います。この場合、そのお給料は必要な経費にならないことが、所得税法で定められています。
 これは、事業主の方が得た所得を同一生計内の家族に形式的に分散することにより、税金の負担を減らそうとすることを防止する目的があります。(所得税法56条「事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例」)

生計を一にするとは?

 「生計を一にする」とは、「日常の生活を資を共にすること」を言います。簡単なイメージは、ある家族が、お父さんの財布(収入)で生活している場合、そのお父さんや子どもは、生計を一にする配偶者や親族に該当することになります。
 注意しなければならないのが、「生計を一にする」は「必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではない」ことです。例えば、進学を機に家を出た子どもに生活費や学資金を常に送金している場合には、同一の家屋に起居していませんが、その子は生計を一にする親族に該当することとなります。逆に、同一の家屋に起居にしている場合であっても、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合には、「生計を一にする」には該当しないこととなります。(所得税法基本通達2-47「生計を一にするの意義」)(参考国税庁HP/生計を一にする)

事業専従者の特例

給与を必要な経費として取り扱うことができる

 上記のように、原則的には、生計を一にする配偶者その他の親族への給与等は必要な経費に該当しません。しかし、その配偶者や親族が「事業に専ら従事している」場合には、その配偶者や親族に対する給与等は必要な経費として取り扱うことができます。
 なお、必要な経費に算入される金額は、青色事業専従者給与の届出を行っている場合と、その届出を行っていない場合で異なってきます。

「事業に専ら従事している」とは

 「事業に専ら従事している」とは、次の年齢と期間を同時に満たす必要があります。
・年齢:事業に従事する者が15歳以上(12月31日で判定)であること。
・期間:事業に従事する期間が1年のうち6月を超える期間であること。
 →季節営業その他の一定の場合は、事業に従事可能期間の2分の1の期間を超える期間従事
 →期間については、事業従事者が学生である場合などの定めがあります。
(所得税法57条1項、所得税法施行令165条)

青色事業専従者給与の届出を行っている場合(青色事業専従者給与の特例)

支払った給与が必要な経費

 青色申告書を提出することについて税務署長の承認を受けている個人事業者が、専らその事業者が行う事業に従事する者について、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届出書に記載されている方法に従い、その記載してある金額の範囲内で給与を支払っている場合には、その従事する者(「青色事業専従者」という)に対して支払った給与の額は、必要な経費に算入されます。これを「青色事業専従者給与」といいます。
(所得税法57条1項、2項)

青色事業専従者給与に関する届出書

記載事項

 青色事業専従者給与に関する届出書には、「仕事の内容・従事の程度」、給料や賞与に関し「支給期・金額」の記載が求められており、実際の支給も届出に従って行う必要があります。
(所得税法施行規則36条の4)

届出期限

 届出の期限は、3月15日となっております。1月16日以後に事業を開始した場合、新たに事業専従者を有することになった場合には、その日から2月以内となっております。
(所得税57条2項、所得税法施行規則36条の4)

記載方法

 青色事業専従者給与に関する届出書の書き方に関しましては、こちらをご参照ください。国税庁HP/青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書(書き方)

職務の内容等と照らし相当な給与

 同一生計内で所得を分散することによる税負担の軽減防止を目的にして、原則的には、同一生計内の配偶者や親族への給与の支払いは必要な経費として取り扱わないとの法律があることは前述の通りです。よって、青色事業専従者に対する給与の額は、届出書にも仕事の内容や十字の程度の記載が求められていますが、それら内容等と照らして相当な額であることが求められています。
(所得税法57条1項、所得税法施行令164条)

白色申告者の事業専従者控除の特例

一定金額が必要な経費とみなされる

 青色申告の承認を受けている事業者が、青色事業専従者給与に関する届出を提出した場合には、職務内容等に照らして相当な給与を青色事業専従者給与に支払った場合、その金額は必要な経費に算入されますが、白色申告者に事業専従者がいる場合には、次の金額のうち、いずれか低い金額が、必要な経費とみなされることになります。これを事業専従者控除といいます。
 ① 配偶者である事業専従者86万円(配偶者以外の事業専従者50万円)
 ②(不動産所得の金額+事業所得の金額+山林所得の金額(この特例規定適用前の金額))÷(事業専従者の数+1)
(所得税法57条3項)
 ちなみにですが、上記で計算した金額が、必要な経費とみなされることになるのですが、そのみなされた金額は、事業専従者の収入金額(給与所得)とみなされることになります。
(所得税法57条4)

確定申告所への記載が必要

 事業専従者控除の適用を受けるためには、確定申告書等への記載が必要となってきます。
 青色申告の場合には、確定申告書第一表、第二表、青色決算内訳書、白色申告の場合には、確定申告書第一表、第二表、収支内訳書にそれぞれ記載が必要となります。

最後に

 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受ける配偶者や親族、白色申告者の事業専従者である配偶者や親族は、控除対象配偶者や扶養親族になれません。よって、配偶者(特別)控除、扶養控除の適用は受けれないこととなります。
(所得税法33条、34条)

 事業専従者につき、給与を必要な経費として計上する場合と、配偶者(特別)控除・扶養控除を受ける場合、どちらがメリットがあるのか検討する必要があります。

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