開業・起業のために必要な支出=開業費の取扱い

 個人の方が、開業・起業をする際には、さまざまな支出が発生します。「開業届」を税務署に提出する前の支出もあるかと思います。

 今回は、開業・起業前の支出の税務上の取扱いについてお話します

開業・起業前の支出の取扱い

 開業・起業前の支出であっても、その支出が「開業のために必要な支出(=開業費)」であれば、事業の必要経費として処理することができます。

開業費の会計処理

 「開業費」の会計処理は、一旦、資産計上(「繰延資産」)し、その繰延資産の償却を通じて費用化されます。

 仕訳は、開業費 / 事業主借 という仕訳になるかと思います。書籍等では、「事業主借」ではなく、「元入金」を用いているものもありますが、「事業主借」は、翌年繰り越す時に、「事業主貸」とともに「元入金」に加減算されるため、「事業主借」でも「元入金」でも、どちらでも良いかと思わ舛。

 償却を通じて費用化といえば、減価償却資産の減価償却を思い浮かべる方も多いかと思います。減価償却と言えば、『何年で償却するの?』という疑問も生じてくるかと思います。

 「開業費」の償却期間は、60カ月間で均等に償却するか、又は任意償却のどちらかによります。

 任意償却とは、開業日として計上した金額の範囲内で償却費として認めるもので、開業・起業時に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいとされています。

 また、60カ月に均等に償却費として必要経費に算入しなければならない、という法律はありませんんので、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

 なお、償却時の仕訳は、開業費償却 / 開業費 という仕訳になります。

いつ必要な経費に入れた方が良いか?

 任意償却を選択する場合、いつでも償却費として必要経費に算入できるわけですので、利益が生じた時に費用化すれば、それだけ利益は圧縮され、納付する税金は減少いたします。

 青色申告をされている方は、損失が生じた場合、その損失は3年間に渡り繰り越すことが出来ますが、3年間に相殺できなければ、消えてしまいますので、償却費として必要な経費に算入するタイミングは、慎重に考えた方が良いものと思われます。

開業費に含まれないもの

 商品の売買を行っているような場合の仕入、車両やパソコン・机などの固定資産、事務所等を賃借する際の礼金などは、開業・起業前の支出であっても「開業費」には該当しません。仕入れや固定資産などで会計処理する必要があります

書類の保管を忘れずに

 開業・起業前はバタバタし、また会計処理が後回しになるため、レシート等の証拠書類を紛失してしまうこともあります。「開業のために必要な支出」を費用化するためには、客観的な資料が必要です。早めに会計処理を行うか、会計処理が後回しになりそうなときは、レシート等の証拠書類を紛失しないように保管をし、会計処理を忘れないようにしてください。

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