売掛金の貸倒対策に経営セーフティ共済

 帝国データーバンクのホームページによると、「新型コロナウィルス関連倒産」が、2022年10月20日現在で累計4,000件を超えているようです。
 新型コロナウィルス関連の倒産件数の業種の内訳としては、「飲食店」が一番多く、ついで「建設・工事業」、「食品卸」、「ホテル・旅館」「食品小売」の順になります。
 コロナがなかなか落ち着かないのに加えて、物価の高騰、円高による原材料等の高騰で、倒産件数が伸びる可能性があります。
 倒産件数が伸びる可能性がある中で事業者の皆さまにおかれましては、取引先の倒産による売掛金の貸倒リスクに備えていく必要があると思います。

売掛金の貸倒リスクへの備え(経営セーフティ共済)

 取引先の倒産による売掛金の貸倒れリスクに対応するための制度として、中小機構の経営セーフティ共済があります。
 下記に経営セーフティ共済制度の概略をご紹介します。

どんな制度?

 経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産し、売掛金等が回収不能になることによる経営難・連鎖倒産等を防ぐための制度です。
 制度の内容としては、「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない方の金額を、無担保・無保証で借入を行うことが出来ます。売掛金の貸倒額を、中小機構が補填してくれる制度ではなく、借入金制度なのでその点は注意が必要です。

返済及び利子

 借入制度なので返済が必要ですが、借入につき利子はつきません(ただし、借入れ後は、共済金の借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されます。)。
 返済期間は、6月の据え置き期間を経過後、借入金額に応じて、5年~8年となっています。なお、返済期限を経過した場合には、一定の割合の違約金が生じます。

https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/proceed/index.html

制度を利用できる「倒産」とは

 制度を利用できる「倒産」についても取り決めがあります。いわゆる「夜逃げ」で売掛金が回収できなくなった場合は、制度適用の対象外となっています。
 制度の対象となる「倒産」については、下記の通りになりますが、細かい内容については、経営セーフティ共済のページの「倒産の定義」をご覧ください。

https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/features/index.html

掛金と税務上の取扱いについて(節税効果?)

 掛金について

 掛金は、月額5,000円から200,000円までの範囲内で、800万円に達するまで積み立てることが出来ます。掛金の増額・減額も書類申請によって可能です。
 経営セーフティ共済を解約した場合は、解約手当金を受取ることが出来ます。12か月以上掛金を納付していれば、その掛金の80%以上が、40か月以上納付していれば、その掛金の全額が戻ってきます。

掛金等の税務上の取扱い

納付時の税務上の取扱い

  掛金は、損金(必要経費)となります。1年以内の前納の掛金についても、払い込んだ時点で損金(必要な経費)となります。よって、支出は伴いますが、掛金分税金は減少します。

解約手当金の税務上の取扱い

 経営セーフティ共済を解約することにより戻ってきた金額は、益金(収入金額)となります。

課税の繰延べ

 掛金を納付時は、損金(必要な経費)となり、掛金が戻ってきた場合は、益金(収入金額)となるため、課税が繰り延べられる形となります。よって、長い目で見れば、税金のプラス・マイナスはゼロです。

節税効果を得るためには

 経営セーフティ共済は、納付時の掛金が損金(必要な経費)で、解約時の戻ってくるお金は益金(有入金額)です。よって、節税効果は、経営セーフティ共済を解約しないか、戻ってくるお金を、一時で損金(必要な経費)となるものに利用する場合に生じます。

「貸倒リスクへの備え」以外のメリット

 経営セーフティ共済は、貸倒リスクに備えるためのものですが、納付した掛金から一時貸付金を受けることもできます。
 一時貸付金は、取引先事業者が倒産していない場合でも、事業者の方が臨時に事業資金が必要となった場合に、掛金納付開始から12か月経過した後、掛金や納付期間に応じて一定の金額の貸付を受けることが出来るものです。
 本来の借入制度と異なり、この一時貸付については、金融情勢に応じた利率で利息が付され、貸付を受ける際の前払いとなっています。
 なお、返済期間は1年、期限一括償還となっています。

終わりに

 以上が経営セーフティ共済の簡単な概要の紹介になります。
 なお、経営セーフティ共済は、加入資格があったり、制度の対象となる債権の種類があったり、細かい決まりがあります。細かい部分については、下記をご参照ください。
経営セーフティ共済/中小機構」

(参考)

新型コロナウィルス関連倒産/帝国データバンク』

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